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★ 標準時刻 |
・・・ 時間の定義 (JST、UT、UTC、GPS時刻、うるう秒)、時間の歴史 |
★ 時刻・周波数標準機器 |
・・・ 発振器の比較、標準信号の伝送 (HF、LF、LORAN-C、GPS) |
★ 水晶発振器 |
・・・ 超高安定水晶発振器の歴史 |
★ 原子周波数標準器 |
・・・ 歴史、原子時計の比較、ルビジウム原子周波数標準、セシウム原子周波数標準、
水素メーザ周波数標準、これからの原子時計 |
★ 評価方法、 評価例 |
・・・ 安定度と確度、アラン分散 |
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超高性能水晶発振器の歴史
「Proceedings of the 1996 IEEE International Frequency Control Symposium, pp. 47-57.
BRIEF HISTORY OF THE DEVELOPMENT OF ULTRA-PRECISE
OSCILLATORS FOR GROUND AND SPACE APPLICATIONS」より、 |
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高性能水晶発振器の起源: |
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1880年 |
Pierre and Jacques Curie(仏) |
圧電効果(ピエゾ効果)を発見。1881年Gabriel Lippmann(仏)が数学的に立証 |
1917年 |
P.Langevin(仏) |
圧電効果を初めて応用した潜水艦探知用ソナーを開発 |
1921年 |
W.G.Cady(米) |
水晶を用いた発振回路を初めて開発 |
1924年 |
G.W.Pierce(米) |
現代の水晶発振回路の原型となる水晶発振回路を発明し、特許を取得 |
1932年 |
古賀逸策(1988.12.5−1982.9.2) |
ATカット水晶振動子(恒温槽を必要としない水晶振動子R1板(AT)、R2板(BT))の発明 |
1952年 |
ベル研究所 |
Arthur W. Warnerが2.5MHzと5MHzのATカットの水晶振動子「Warner resonator」を開発
Warner resonator : Q=10E6 以上、周波数安定度=5 x 10E-12/24時間、製造技術を確立、
温度安定度=1 x 10E-7、ATカット、5MHz(5次オーバートーン)、HC6メタルケース |
1958年 |
近代の水晶振動子を用いた周波数標準器の原型となる発振器を開発 |
1957年 |
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スプートニクが打ち上げられ宇宙開発競争の時代が始まる。
宇宙開発の種々の用途に超高性能な発振器が用いられた。
海軍の航行支援衛星システムに始まり、現代のGPSシステムにも用いられている。 |
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真空管式発振器: |
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Western Electric GS-60157 : 2.5MHz発振器
Western Electric GS-60158 : 2.5MHz発振器 Warner resonator方式を使用、3.3 x 10E-11 / 24時間、温度安定度=1 x 10E-9 以下、
発振回路の重量:約23kg、容積:75000立方cm、消費電力:50W |
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トランジスタ式発振器: |
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1950年代後半から1960年代前半: 真空管に代わる高信頼性、小型、低消費電力の発振器が開発される。
1948年 ・・・ ゲルマニウムトランジスタの発明 (Bell Telephon Laboratories John Barden とWalter Brattain)
1949年 ・・・ 接合型トランジスタの理論を発明 (William Shocklay) |
1953年 |
G. Sulzer トランジスタ式周波数標準器と各種発振回路について発表 100kHz、ATカット水晶、1.4x10-9/24H |
1954年 |
最初の商用の全トランジスタ発振器 ・・・ Sulzer Laboratories設計、James Knight Company販売
「JK-Sulzer Frequency Standard model FS-1100T」
使用水晶振動子:James Knight JK G-12-AS、AT Cut、1MHz、
変形コルピッツ発振回路(Sulzer発振器のトレードマークとなる回路、この時代はPierce発振回路が一般的だった)
5x10-10/24H、2.2x10-11rms/1S、2x10-11/℃、7pound、315in3、消費電力:DC2W |
1960年 1962年 |
Sulzer model 5A
Sulzer model 2.5A |
今日の基準からしても、もその性能は際立っている。
1960年代の性能標準器。
DCとACのNFBが掛けられ水晶振動子のDC動作点を
安定に保つようになっている |
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宇宙用発振器: |
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1960年 |
TRANSIT 2A ・・・ Bliley Electric BG73A 3MHz、8x10-9/day ・・・ 最初の宇宙用高安定発振器
15分の可視時間中の周波数変動:2x10-9 ・・・ 100m精度で位置決定が可能
このために、0〜50℃において5x10-8/℃の性能の水晶発振器が必要
多層の熱絶縁材と大きな熱容量を持たせることで実現した
質量8ポンド、体積:48in3、消費電力:0.11W |
1961年 |
TRANSIT 4B ・・・ JHU/APLにより開発された、より小型・高安定な発振器が用いられた |
1963年 |
Sulzer Oscillators (Sulzer Laboratories) キセノンストロボランプのタイミング用に使用された
衛星の位置決定のために、星座を背景にして撮影された |
1963年 |
Frequency Electronics の発振器が衛星Nimbusに搭載された 1x10-9/24H |
1973年 |
最初の周波数・時刻システムが搭載された衛星 ・・・ NST-2 Timation
使用水晶:Bliley BG61AH-5S 1x10-10/24H |
1974年 |
JHU/APLが機械的、電気的に新しい水晶発振器を設計
表面実装部品、Blileyの振動子を使用 チップサイズの発振器 |
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フェーズノイズ: |
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1970年代にフェーズノイズの重要性が言われだした |
1969年 |
Sulzer 1170 その後6年間高いフェーズノイズ性能を保持していた
-110dBc/1Hzオフセット、-160dBc/10kHzオフセット、5x10-10/24H、5MHz、5次オーバートーン、ATカット |
1975年 |
Austron 1120S 高いレベルで振動子をドライブして実現した。ただし、時間安定度は良くない(5x10-9/24H)
-180dBc/1kHzオフセット |
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SCカット: 新しい水晶振動子のカット方法 -->Warnerの設計以降もっとも大きな進展となった |
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1975年 |
Errol EerNisse ・・・ stress compensated (SC) cut |
1976年 |
Jack Kusters ・・・ thermal transient compensated cut (TTC) |
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いづれも同じカット方法だがSCカットという名前が一般的となった
ATカットより優れた点:
@発振器の起動時の温度安定度が良い
A高い駆動レベルで駆動可能 ・・・ 高S/N、高短期安定度
B周波数の不連続引き起こすActivity dipがまれにしかない
Cウォームアップ時間が短く、周波数のオーバーシュートが少ない
D加速度の影響を受けにくい |
1980年を過ぎて商用生産されるようになった |
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HP10811A/B(SCカット)はHP10544B(ATカット)に比べ劇的な温度安定度改善と顕著な短期安定度がみられる
SCカットにより1x10-13/10s〜100sが容易に実現できるようになった HP10811A/Bシリーズの仕様比較 |
1989年 |
Ultra-low Noise oscillator ・・・ -120dBc/1Hzオフセット、ノイズフロア:-178dBc、安定度は1x10E-10/24H |
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BVA発振器: |
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1978年 |
Raymond Bessonが開発 BVAの構造上の特徴
@電極が振動子の振動面に取り付けられていない。 両面にコンデンサディスクを取り付けて接続している
A発振周波数を決定する振動子と、電極と振動子を接続するコンデンサディスク、振動子を取り付けるリングは同一の水晶から切り出される
性能上の特徴:
@ショックや振動に対して強い
A電離放射の影響を受けにくい
B加速度の影響を受けにくい
C安定度が高い
BVA : フランス語の「Boitier Vieillissement Ameliore (Enclosure with Improved Ageing)」の略 |
1978年 |
NBSがATカットのBVAで8x10-14を達成 1x10E-13をきる最初の発表 |
1980−
1981年 |
Oscilloquartz model 8601 ・・・ 最初の商用BVA発振器
ATカット、5MHz、5次オーバートーン、3.5x10-13/10s、5x10-12/24H
1980年代後半にSCカット振動子が使われ性能が改善された -137dBc/1Hzオフセット、1〜2x10-13
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新世代の衛星搭載用発振器: |
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1988年 |
Oscilloquartz製SCカットBVAを用いたTOPEX/POSEIDON用発振器(Type142)をJHU/APLが開発 3.7x10-14/10s、-137dBc/1Hzオフセット |
1992年 |
Frequency Electronics EF2138 |
1993年 |
Frequency and Time System model 9500 |
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第二世代のBVA: |
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1989年 |
Tactical BVA 、10MHz、HC-40ホルダー ・・・ 小型、振動に強い |
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